岩井堂観音のことである意味いちばん謎なのは、岩山の脇を流れる竜間ヶ沢です。 というのもこの地に観音像が安置されたきっかけは堂のある岩山ではなく竜間ヶ沢であるらしいからです。 岩井堂入口に立つ改築記念碑の裏には「岩井堂観音略縁起」として以下のように書かれています。

浅草観音の発祥岩井堂観音はその昔継體天皇の御代 一人の旅僧竜間ヶ沢に㚑顕奇瑞を感得し尊像を安置せしと傳う

いったいどんな霊験を得たのかについてはわかりませんが、 旅の僧が旅をやめて堂を立てて観音像を奉るだけの何かがこの竜間ヶ沢にあったということなのでしょう。 (岩山までを含めて「竜間ヶ沢」という地名かもしれませんが)

竜間ヶ沢についてはもうひとつ面白い言い伝えがあって、 以下は明治に編纂された南高麗地誌の記載になるのですが、 (『南高麗郷土史 資料集・一 地誌・村誌』(平成9.11.1)で復刻されたものを参照)

竜間ヶ澤
村ノ未申ノ方字前箇貫岩井堂ノ入ニアリ
多摩郡高麗郡両郡境ノ谿間ニ一ツノ洞穴アリ
其洞穴ヨリ湧出ル也
往昔ヨリ土人ノロ碑二地名ヲ竜間ヶ澤ト称セリト云

谷間に一つの洞窟があり、そこから湧き出しているのだといいます。 先に述べた竜宮伝説と何か関連があるのかわかりませんが、 霊験を感じたのであればその洞窟に秘密があるのかもしれません。
なのでちょっとこの沢沿いに歩いてみることにしました。

まず県道から川に下りてみることにします。ちょうど県道のまたいでいる箇所あたりからは急な斜面になっているのですが、県道下に下りてみると、竜間ヶ沢はこのような暗渠になっており、その下流は傾斜の急な沢になっています。工事される以前は、水量が多いときは滝のような様子であったかもしれません。

不思議なことに、沢の流れは川の目前で地下に潜るように消えているのです。

沢の流れ筋と川がぶつかるであろう辺りには、コンクリートの塊と腐食しきった管がありました。
これも暗渠工事に関わりのあったものなのでしょうか

水源を訪ねる